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【イベントレポート】マナビフェスvol.07長野ツアー前編

2024/06/10

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みなさん、こんにちは!
小規模工務店ブランディングの伴走人、南です。

今回のブログは弊社が開催しています、地域工務店や建築家の家づくりを学ぶツアー「マナビフェスvol.07」のイベントレポートになります。今回もたくさんの学びと交流がありました。追求する楽しさと、今後縮小する住宅市場を工務店が生き抜くためのヒントがたくさんありました。

 

少し前になりますが、4月25〜26日に本ツアーを開催しました。
17名ほどで長野にあるパッシブハウス(認定申請中)の物件やLow Energy Building認証の事務所、パッシブ換気を採用した住宅をはじめとした数多くの建築を視察してきました。

前編では、初日の2つの視察についてまとめます。

 

まず視察したのは、PHIのLow Energy Building認証を受けた事務所を建築した、木下建工さんの事務所を視察しました。
パッシブハウス・ジャパンの木下常務にご案内をいただきました。

 

ローエナジービルディング認証は、世界で各国でも最も厳しい基準とも言われるPHIパッシブハウス認証の下位に位置するものです。
様々な理由でパッシブハウス基準に完全に適合していない建築物用の基準となっており、NHQ1の場合は平日10時間程度で夜間使用しないため、エネルギーに関する要求レベルがパッシブハウス建築物より低い設計となっています。

NHQ1では移転直後からCO2排出量は旧本社の4分の1以下になり、同じ人たちが同じデスクワークを同じパソコンでしているのにそこまで変わるのかと驚いたものです。

(木下さんが解説されているブログから引用)

 

といったように、事務所でも高性能な木造建築は可能です。
標高700m400㎡の建物で家庭用エアコン3台で冷暖房を賄っており、一般住宅3棟を建てるように計画をされたそうです。400〜1,000㎡ぐらいの事務所建築であれば、木造高断熱で対応できる(※換気は難しいため知識が必要)とのこと。こういった建物は、地域的にも市場的にも今後需要は充分にありますし、何よりも光熱費の削減は経営上メリットが大きいものです。
※人の出入りや、夜・休日に利用しないことを考慮した換気設計が必要になります。

太陽光や高断熱化のコストも充分に回収できているそうで、
太陽光16.5kW パワコン19.2kW
高断熱化:500万円 太陽光:300万円
これだけのアップデ、毎年100万円以上かかっていた光熱費が2021年度はゼロ以下になったそうです。

さらにポイントとしては、住宅ではどれだけ高性能にしても給湯需要は必要になりますが、オフィスの場合は給湯需要がそもそも少ないためよりエコロジカルかつ比較的ゼロエネ化が容易になることです。

 

そして、事務所建築にありがちな低断熱スパイラルの脱却にもつながる。

①寒いから区切る

②区切るとスペース効率が悪くなり床面積が大きくなる

③コストダウンし、さらに寒くダサくなる

④使い始めると、ファンヒーターで空気を汚したり、電気暖房期で電気生炊き

※ダサくて健康に悪くて維持費が高い、負のスパイラルに陥る

 

そこでさらに必要なのは、会計知識ですね。
経営する上で利益がある会社であれば、減価償却費でメリットもあります。高断熱木造と鉄骨とRC造の減価償却期間を比較すると一目瞭然です。

木造:減価償却期間22年(とても有難いですよね)
鉄骨:減価償却期間27〜34年
RC造:減価償却期間47年

かつ、鉄骨造などは鉄を多く利用するため建築時のCO2排出量が高くなるのも課題の一つですよね。
1kgの鉄の製造時で2.2kgCO2が排出

こういった木造高性能なオフィスは今後広まっていくでしょう。木下建工さんへの視察も私たちでちょうど500組だったそうで、その注目度が伺えます。

 

小規模工務店でも、多角化・多層化が必要となってきている今。地域の事業者向けへの高性能木造建築による事務所建築を提案してみてはいかがでしょうか?

次に視察に伺ったのは、パッシブハウス・ジャパンの代表理事を務めるキーアーキテクツの森みわ氏が設計したパッシブハウス・追分の家(認定申請中)です。

ついて早速写真をパシャリ。

物件を自由見学させていただき、その後に森さんに物件の解説と建築の経緯やエコハウスだけでなくエコロジー全体を生活に根ざすことの意味について講演いただきました。

 

こちらの物件は、現在パッシブハウス認証の申請中の物件です。季節的にその効果を一番体感できる季節ではありませんでしたが、性能の高さや設計でのこだわりを随所に感じる建物でした。

 

森さんは、横浜国立大学で建築を学んだ後、ド イツ・アイルランドの建築事務所で省エネ施 設やパッシブハウスの設計に携わり2009年に 帰国。同年にドイツ発祥の省エネ基準である パッシブハウスの国内認定第一号となる「鎌 倉パッシブハウス」を完成させた国内パッシブハウスの第一人者です。その森さんの性能と設備(再生可能エネルギーを積極的に採用したチャレンジングな仕組みに)のこだわりと、非日常を日常に置く女性らしく自然と調和する意匠性、どれもが大きな学びに。

パッシブハウスは立地条件によっても認証が受けられるかどうかが左右します。当然真南を向いていることが有利ですが、この土地 は方位が真南から東に45度振れていて、「この敷地条件に挑戦しろ という、何かの思し召しかと思った」とのこと。

テーマとしたのが、エネルギー的自立・自活。
蓄電池は、充放電過程や電気変換過程で生じる損失を考慮して、電気自動車で代替。ガスは引き込まず、給湯は太陽熱温水器とペレットストーブのみを熱源とされています。蓄電池で電力自立が可能ですが、オフグリットを考えたものの様々な要因から電気の基本契約はしているそう。空調換気はzehnder CHM200を採用。
※省エネ化を社会で進める中で、対立構造を生まないため。

断熱に関しては、以下が壁構成。
室内側から見て、クロス等仕上げ→プラスターボード2枚→グラスウール40mm→ネオマフォーム80mm→構造用合板9mm→プラスターボード1枚→ウッドファイバー140mm→透湿防水シート→通気胴縁→杉板外壁

UA値で考えるのではなく暖房負荷と冷房負荷で考えており、暖房負荷は12kWh/㎡・a、冷房負荷は15kWh/㎡・aとなっています。サッシは、山崎屋木工の信州カラマツの木窓にサンゴバン社製のトリプルガラス、そしてこの家の象徴とも言えるトリプルコーナーガラスにも初挑戦されたとのこと。

室内側では、部分的に私もスイスで見学した輻射式暖房「土壁暖房パネル」なども採用されていたり、原田左官さんによる版築壁も。左官好きとしては憧れる仕上げであり、蓄熱材としても機能しているそう。

その他にも、土地の特性と暮らし方から考えて、土中温度と連動させたパッシブ・セラー(地中熱を活かした半地下のワインセラー空間)にもチャレンジされています。

それにこの真空管式太陽熱温水器も象徴的でしたね。
何よりも森さんのお話にあった、エコハウスばかり考えている現状に違和感を持っていて、食事を変えたり、着るものも気に掛けてみるなど、生活そのものにエコロジー・サスティナブルな考えが根付いている様子がとても刺激を受けました。

私自身、長年ドイツ・スイスの建築を学び日本に啓蒙する活動をしている中、そういったことがここ数年機になるようになりました。特に子どもが産まれてからは特に。暮らしにエコを根ざしてもらえるように、何か取り組みを考えて森さんともまたコラボしたいと思えた日でした。

 

そして、お楽しみの懇親会ももちろん開催!
木下さん、森さんにもご参加いただき、様々な意見交換を行い、夜まで学びは続いたのでした!後編へ続く!

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